アメリカ自動車産業が大変なことになっていることは周知の事実だ。
昨今の経済危機が最終的な引き金になったが、もともとアメリカ自動車産業は日本の自動車会社が未来型の車の開発に尽力しているのに、地球温暖化、石油枯渇などの問題にかかわりあうことがなく、傲慢にも大きな車を作り続けていた。
確かにその通りなのだが、でもGMに関する限りまったくそれが当てはまるともいえない。なぜなら90年代にカリフォルニアでゼロエミッション法案(スモッグなどの公害を防止するために取り入れられた法案)が可決すると、普通なら信じられない短期間で、この法案に見合う車の開発を自動車メーカーに義務づけた(GMのみならず国内外の自動車会社がこの法律に見合う車の開発をした)。
そこでGM はEV1という画期的な電気自動車を開発した。それは生産価格が非常に高いため販売ではなくリースされた。車に詳しくない私が説明してもわからないと思うので、興味のある人はGM EV1で検索してほしい。私の理解している限りではプリウスのようにハイブリッドではなく、完全な電気自動車だった。ハリウッドセレブにも支持され、その画期的でスタイリッシュな姿はアメリカ自動車産業の底力を見せ付けた。
確かにその時点では商業的に見合うものではなく、バッテリーもまだ十分なものが開発されていなかった、のだが…
1999年に突然生産中止、2003年に存在するすべてのEV1を集め、つぶしてスクラップにした。EV1はとても人気が高く、高額で買い取る、と提案する人も現れ、スクラップ化反対のデモが起こったり、なんと葬儀が行われたり、大きな社会問題になった。GMは採算が合わないため、という理由を挙げたが、それは誰にとっても納得がいくものではなかった。GMにとって次世代の車の生産に成功したのは大きな功績だし、販売やリースを望む人も多数いた。それなのにあたかもその存在を抹殺するがごとく、全車をシンボリックなやり方でスクラップにしてしまった。
当然納得がいかない人々は石油業界(そして石油業界にバックアップされているブッシュ政権が2000年に始まった)からのプレッシャーに屈したのではないか、という説を掲げている。詳しくは「誰が電気自動車を殺したか」という映画を見てください。
あの時EV1が地上から抹殺されなかったら、今のGMはどうなっていたのだろうか?と考えずにはいられない(今はハイブリッドを生産しているらしいが、完全にトヨタの一人勝ちでしょう)。傲慢なビッグスリーも被害者だったのかも。少なくとも開発にかかわった技術者はわが子を殺されたような苦しみを感じたのではないだろうか。
しかし、歴史をさらに70年ほどさかのぼるとGMが石油会社と共謀して都市部でのトロリーバスを買収し、廃止に追いやったという疑惑がある。これは「アメリカ路面電車スキャンダル」と呼ばれている。もしこれが陰謀だったとしたら因果応報というべきなのかもしれない。
PS.1
文化や芸術関係者がお世話になっている「フォード財団」は自動車王ヘンリー・フォードが設立した財団です。もともとは本家本元のフォード・モーターとの関係が強かったのですが、その後財団として独立したものとなっているらしい。1936年に設立されてから数え切れないほどの慈善活動、文化芸術活動を支援してきました。これは因果応報の法則から言うと、かなり良いのでは。日本人から見ると「偽善的」に見えるかもしれませんが…
PS2.
そういえば、シリコンバレーで電気自動車を開発するという話はどうなってしまったのでしょうか?ITバブルでだめになったのでしょうか。ここでがんばってほしいものです。
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